体を冷やす食べもの、温める食べものについて

更新日 2022年12月22日

寒くなってくると、温かいものが恋しくなりますね。
冷え性を自覚している方は、ブランケットや靴下で手足を温めているでしょう。
でも、それだけでは体を芯から温めることはできません。体は外から、そして内部から温めることで、芯から温まります。
体の内部を温めたり冷やしたりする要因のひとつが「食べもの」です。

今回は体調にも大きな影響をもたらす、食べものが持つ温・冷の特性について解説します。

体の調子がなんとなく優れないときは「食べもの」を見直して

体の調子がなんとなく優れないときや、病気ではないけれど体が重いと感じるとき、ありますよね。
胃が重かったり、食欲が無かったり、だるさやお腹のリズムが崩れたり……。
そんなとき、見直して欲しい点が、日々の「食べもの」「飲みもの」です。

外から温めても体内は冷えているかもしれません

なんとなく体調が優れないとき、自律神経が乱れているような気がするときなどは、体の内部の「冷え」が関係しているケースがあります。
体が冷える秋冬は、寒さに負けないよう厚着をし、暖房をつけて体を温めます。

現代は、もこもこした靴下や、着ると体がポカポカしてくる下着など、様々な防寒着が開発されています。
でも、外から体をどんなに温めても、体内が冷えていることがあります。

「冷え」には2種類あり、足先や指先など体の外側が冷えやすいタイプと、内臓・体内が冷えやすいタイプにわかれます。
体内の冷えを自覚することは、足先の冷えを感じるよりも難しく、何らかの不調となって表に出てから気付くことも多いのです。

敏感な方は、胃が冷えて食欲不振や吐き気などを感じているとき、胃の上に手を当てると他の部分よりも「ひんやりしている」と感じられることがありますよ。
手足など体の外側の冷え性と、体内の冷えをあわせ持っている方もいます。

温かい食事や飲みものにも「内臓を冷やす」ものがあります

「体を冷やす食べもの」は、冷たいアイスやドリンクだけではありません。
温かい食べものや飲みものにも「冷性」「涼性」という、内臓を冷やす性質をもつものがあります。
せっかく温かいものを飲食して、芯からホカホカ温まったと思っても、じわじわと内臓を冷やしてしまうのです。

体を温める食べものは、体内に取り込まれて、内臓から体を温めてくれます。

食べものと体の不思議な関係「温める食べもの」「冷やす食べもの」

料理の温度の「熱い」「冷たい」に関係なく、食べものには「体を冷やすもの」と「体を温めるもの」があります。

寒いときに食べたいもの、飲みたいものが体を冷やす性質のことも。

食べものの持つ性質と、体の不思議な関係についてわかりやすく解説します。

食べものには温冷に関する3種の「性」があります

漢方の世界で口に入れるものは、体を「冷やす」とされているもの、「温める」とされているもの、それ以外のものに分けられます。

:食べると内臓を温める性質には、「熱性」「温性」があり、熱性の方が性質が強く温性はおだやかです。
:食べると内臓を冷やす性質には、「冷性」「涼性」があり、冷性の方が性質が強く涼性はおだやかです。
:平性は「冷やす」性質や「温める」性質を中和したり、おだやかにする性質を持っています。

※同じ漢方・東洋医学の書物やサイトでも、どの文献を論拠にしているかによって、内容は若干異なります。

食べると内臓を温めやすい「熱性」「温性」

食べると内臓を温めやすい食べもの・飲みものは「熱性」「温性」と呼ばれるものです。
熱性はその字のごとく「とても温まる」とされるもの、温性はおだやかに温まるものを指します。

簡単ですが、一例を挙げます。

肉類牛肉・羊肉・クジラ肉・鶏レバーなど
魚介類アジ・イワシ・ブリ・カツオなど青魚・エビ・干しなまこ・うなぎ・鮎など
野菜ショウガ・ねぎ・ニンニク・みょうが・もやし・あさつき・しそ・にら・らっきょうなど
果物・ナッツもも・ざくろ・くるみなど
スパイス唐辛子・お酢・わさび・からし・山椒・コショウなど
加工品納豆・かつお節・紅茶など

パッと見て感じることはあるでしょうか。

例えば、唐辛子は直接肌に触れるとやけどをすることがあるほど、熱を持つ植物です。
北海道ではジンギスカンで羊肉をよく食べますが、中国の北方でも羊肉のしゃぶしゃぶなどをよく食べます。
おそらく体を温めることを、経験則で知っているからでしょう。
野菜は刺激のあるものが多く、魚は青魚が多いですね。

食べると内臓を冷やしやすい「冷性」「涼性」

食べると内臓を冷やしやすい食べもの・飲みものは「冷性」「涼性」です。
冷性は体を内部から冷やし、涼性はおだやかに熱を冷まします。

簡単に例を挙げます。

肉類豚肉・馬肉など
魚介類あさり・牡蠣・カニ・タコ・すっぽんなど
野菜キュウリ・トマト・なす・ゴーヤー・冬瓜・アスパラ・セロリ・レタス・ごぼう・大根・白菜・タケノコ・ゆり根など
果物・ナッツすいか・バナナ・なし・柿・干し柿・キウイなど
スパイスしょうゆ・みそ・食塩・白砂糖・ミントなど
加工品豆腐・のり・ひじき・わかめ・こんぶ・卵白・ヨーグルト・緑茶・紅茶・ウーロン茶・牛乳・ラーメン・そば・こんにゃくなど

注目して欲しい点は、暑い国原産のものが多いことです。
暑い国で生まれた飲みもの「コーヒー」は、体を冷やします。
アイスコーヒーだけでなく、熱々のホットコーヒーも冷性の飲みものです。
朝起きてすぐ、体が冷えた状態でコーヒーを飲むとさらに冷えてしまうので、内臓が冷える方、胃の調子が優れない方にはおすすめしません。
「バナナ」も暑い国のフルーツで、体を冷やします。

意外なものは豚肉でしょうか。
精をつけるといわれる牡蠣やすっぽんも、冷性の食べものです。

また、暑い時期に育つ夏野菜の多くも体を冷やす性質を持っています。
夏バテを解消してくれる沖縄料理ゴーヤーチャンプルーは、ビタミンを豊富に摂れるだけでなく、ゴーヤー・豚肉・卵という体を冷やす食材も使っています。
これも暑い地域ならではの経験則に基づいた、生活の知恵ですね。

体の温冷にあまり影響を与えない「平性」

体の温冷にあまり影響を与えない平性の食べものは、温冷の性を緩和したり、中和したりする働きもあります。

肉類鶏肉・牛レバー・豚レバーなど
魚介類いか・はまぐり・かれい・あんこうなど
野菜じゃがいも・キャベツ・たまねぎ・にんじん・黒ゴマ・大豆など
果物・ナッツ銀杏・アーモンドなど
スパイスしょうゆ・みそ・食塩・白砂糖・ミントなど
加工品ハム・豆乳・卵黄・梅干し・うずら卵など

平性の食べものは、この後ご紹介する食べ合わせで活躍しますよ。

食べものと内臓【五臓六腑】の関係性

食べものの「冷性」「温性」「平性」についてご紹介しましたが、それぞれは内臓や体の働きをつかさどる「五臓六腑」に影響を与えます。

内臓が冷えると、冷えた部分に不調が起きることがあります。

例えば、肺が冷えると喘息がぶり返したり、胃が冷えると胃もたれや吐き気・胃痛が起きたりします。
腸が冷えると下痢をしやすくなり、腸内バランスが乱れがちになります。
内臓が弱いという自覚がある方は、好んで「冷性」の食べものを摂ることで、無意識に活力不足を引き起こしているかもしれません。

肝…目・胆のう・筋肉など

五臓六腑のうち、【肝】は肝臓を指し、さらに胆のうや目、筋肉などをつかさどります。
【肝】に影響を与える食べもの・飲みものをピックアップしました。

温性鶏レバー・えび・うなぎ・ニラ・お酢など
冷性馬肉・すっぽん・セロリなど
平性牛レバー・豚レバー・梅干し・銀杏など

脾…胃腸、消化器・口(渇き)など

【脾】は胃腸や消化器、口やのどの渇きなどに関係します。

温性牛肉・羊肉・くじら肉・アジ・イワシ・ブリ・鮎・うなぎ・かつお・かつお節・納豆など
冷性豚肉・豆腐・牛乳・トマト・なす・レタス・白菜・アスパラ・大根・タケノコ・バナナ・しじみ・タコ・こんぶ・こんにゃく・ヨーグルト・ラーメン・うどん・そばなど
平性鶏肉・ハム・あんこう・かれい・大豆・じゃがいも・キャベツ・たまねぎ・にんじんなど

肺…呼吸器・大腸・皮膚・粘膜・鼻・バリア機能・むくみなど

【肺】は肺のほか、呼吸器や大腸・皮膚・粘膜・鼻・バリア機能・むくみなど多岐に影響します。

温性牛肉・しょうが・にんにく・みょうが・もやし・しそ・あさつき・わさび・からし・こしょう・山椒・唐辛子など
冷性きゅうり・ごぼう・ふき・梨・干し柿など
平性銀杏・豆乳・アーモンドなど

腎…膀胱・耳・骨・老化現象・水の代謝(むくみ)など

【腎】は腎臓と膀胱・耳・骨・老化現象・水の代謝とむくみに影響します。

温性干しなまこ・くるみ・ざくろなど
冷性あさり・牡蠣・かに・のり・ひじき・わかめ・すいか・キウイ・塩・しょうゆなど
平性うずら卵・いか・はまぐり・黒ゴマなど

心…小腸・血行・舌・精神など

【心】は心臓のほか、血行や小腸、舌、精神などに影響します。

温性らっきょう・紅茶など
冷性卵白・柿・コーヒー・緑茶・ウーロン茶・ゆり根など
平性卵黄など

※これはどうかな?と悩む食材については、らくらくファーマシーへお気軽にご相談くださいませ。

温性と冷性の食べものをバランスよく食べましょう

食べものは、温性と冷性をバランスよく組み合わせ、平性をうまく取り入れつつ調理することで、食べ合わせが良くなります。
また、キンキンに冷えたものより、温かいものの方が体を温めたり、冷性がおだやかになったりします。

単純に、冬や冷え性の方は温性のもの、夏やほてり症の方は冷性のものを食べれば良い、というわけではありません。
組み合わせと工夫で、美味しく健康的な食生活へとブラッシュアップしましょう。

昔から親しまれてきた食べ合わせには先人の知恵が生きています

昔から親しまれてきた食べ合わせには、先人の知恵が生きています。
例えば、羊肉が北の国で重宝されるのは、体を温めると知っていたからかもしれませんね。
ステーキのコースを頼むと、最後にコーヒーが出てきます。
牛肉で熱くなった胃に冷性のコーヒーが入ると、上手に中和されます。

逆に体を冷やす豚肉は、体を温めるしょうがと組み合わせて生姜焼きが食べられてきました。
「冷やす食べもの」と「温める食べもの」は組み合わせで体にとって良い状態になります。
また、冷性の食べものは冬になったら、温めて食べた方が冷性がおだやかになりますよ。

理想的な組み合わせ
みそ汁  みそ(冷)とネギ(温)
冷や奴  豆腐(冷)とかつお節、ネギ、生姜(温)
おひたし ほうれん草(冷)とかつお節(温)

朝食を「卵かけご飯」だけですませると、生卵と炭水化物で体を冷やしてしまいます。
コーヒー1杯とヨーグルトも、冷性同士の組み合わせです。

寒い時期や体調が優れないときは特に、温性の食材で温かい料理を作って食べると温活になります。

また、白砂糖に代わって「体に優しい砂糖」として親しまれているきび砂糖やてんさい糖ですが、こちらも冷性・温性があります。

暑い地域で育つさとうきびから作られるきび砂糖は、冷性のため夏に使用することに向いています。
寒い地域で育つさとうだいこんから作られるてんさい糖は、温性のため冬に使用することに向いていますよ。

食べものが悪いのではなく受け入れられない体の状態が問題です

食べものの「冷性」と「温性」をご紹介してきましたが、食べものの性質だけが体調を左右するわけではありません。
冷性や温性を柔軟に受け入れられず、ダメージを負ってしまう体の状態が問題といえます。

いつもと同じものを食べているのに体調不良が起きた場合は、体になんらかの負担やストレスがかかっていると考えましょう。

陽虚(体を温めるパワーが足りない状態)で、冷性のものを食べれば、内臓に負担がかかって喘息や下痢を引き起こす可能性があります。
本来精がつく牡蠣やすっぽんも、内臓が冷えている状態で食べては本領発揮できませんね。

面白い食べものがカレーです。
体を温めるスパイスがたくさん入っていますが、暑いところの食べもので発汗を促すため、最終的に体が冷えてしまうメニューです。
そこで体を温める牛肉やしょうが、平性のにんじん・じゃがいも・たまねぎを入れ、温性のらっきょうを添えれば、お腹も肺も温まるメニューに変身します。

ポイントは日々の食生活で冷性・温性のバランスを考え、生活習慣を整えて、ちょっとした影響なら受け入れられる健康な体作りを行うことです。

なんとなく不調が続いたら食べもの・飲みものにも注目してみましょう

体の冷えやむくみ、なんとなく不調といった症状が続いているなと感じたら、食べもの・飲みものに注意するほか、すぐに当薬局らくらくファーマシーにご相談ください。

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病は気から、と言います。
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